妻の口癖

 

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妻の口癖は、「おいしい」。

何を食べても、「おいしい」と言います。家で母が作る料理にも「おいしい」。自分でつくったおかずにも「おいしい」。外食しても「おいしい」。食事中はずっと「おいしい」。

 

私はどちらかというと、「おいしい」と思っても口に出すことはあまりありません。しかし、妻は私に、「ほら、これとってもおいしいから早く食べてみて」と言って催促してきます。少し気圧されながら口にすると、思わず「確かに、おいしい」と言ってしまうのです。少しずつですが、私も「おいしそう」「おいしい」という言葉を口に出すようになってきました。

 

こうした妻の姿に対して、「こういう人なんだ」くらいに軽く思っていたのですが、柏木庫治先生の著作にあった一節を読んで、認識が大きく変わりました。

 

たくわんを卵焼きの味に食べることのできる者は、実に幸せである。この幸せを表現する声が美しいのである。美しさはくにさづちのみこと様のお心である。たくさんの金を出して珍品を食べられるから、食べ物に徳がある、というのではない。食べ物に徳があるということは、どんなものでもおいしく食べられる口を持っている者が、一番食べ物の徳を持っているものである。

『柏木庫治教話集 一』p.160

 

この話でいえば、妻は私の知る限り一番「食べ物の徳がある人」だったのです。妻にこの話をするととても喜んでくれて、さらに話を聞くと、その元には彼女のおばあさんから伝わる信仰がありました。

 

「何でも『おいしい』と言って食べれば、親神様の御守護で全部が栄養になって、健康に過ごさせてもらえる。だから、何を食べたら体にいいということはない。全部いいんだ」。

 

これがお道の信仰だ、と心底思いました。何を食べても「おいしい」という美しい声。それこそが何にも勝る究極の栄養であり、何よりの健康の秘訣なのです。私も未熟ながら、「おいしい」と連呼する妻に少しでも近づけるように頑張りたいと思います。